マーケティング視点でBMSGの成功を分析してみた

2025-10-08コラム
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はじめに

2020年に設立されたばかりの音楽事務所BMSG(ビーエムエスジー)が、わずか数年で日本の音楽業界に革命を起こしています。BE:FIRST、MAZZEL、SKY-HI、Novel-Core、HANA、STARGLOWなどの所属アーティストは次々とヒットを飛ばし、特にグッズ売上では「日本一売れている芸能事務所」とまで言われるほどの成功を収めています。

なぜ新興事務所のBMSGがこれほどまでに成功したのか?その背景には、従来の芸能界の常識を覆す革新的なマーケティング戦略がありました。今回は、BMSGの成功要因をマーケティングの観点から徹底分析し、一般企業にも応用できる学びを探っていきます。

BMSGとは?基本情報と経営思想

BMSGは、元AAAのメンバーでラッパーのSKY-HI(日高光啓)氏が2020年に設立した音楽事務所です。社名は「Be My Self Group」の頭文字で、「アーティストが自分らしくいられる環境を作る」という理念を表しています。

核となる経営思想:

  • 「才能を殺さないために」というミッション
  • 個性と多様性の尊重
  • ファンを「仲間」として捉える視点
  • 革新的でありながら誠実な運営

この思想が、以下で解説するマーケティング戦略の根幹を成しています。

マーケティング成功の3つの柱:C→P→Mモデル

BMSGの成功を分析すると、コミュニケーション(C)→ パワー(P)→ マネタイズ(M) という明確な流れが見えてきます

1. コミュニケーション戦略:ファンとの深い絆形成

①デビュー前からの物語共有

BMSGの最大の特徴は、オーディション段階からファンと物語を共有することです。BE:FIRSTを生んだ「THE FIRST」、MAZZELを生んだ「MISSION×2」では、練習生たちの成長過程をリアルタイムで公開。視聴者は「推し」の成長を見守りながら、まるで自分もその旅路を共にしているような体験を得ました。

マーケティング的効果:

  • デビュー前からの認知度獲得
  • 深い感情移入による強固なファン形成
  • 口コミによる自然な拡散

②SNSでの双方向コミュニケーション

BMSGの所属アーティストは、SNSでファンとの距離を巧妙に縮めています。単なる宣伝ではなく、日常の一コマや制作裏話を共有し、ファンのコメントにも積極的に反応。これにより「身近な存在」として親しまれています。

③「媚びない」誠実な姿勢

興味深いのは、BMSGが「ファンに媚びない」ことを明言していることです。これは一見矛盾に思えますが、実際には「本当に良いものを提供し、それを理解してくれる人と共に歩む」という姿勢です。短期的な人気取りではなく、長期的な信頼関係の構築を重視しています。

2. パワー構築:ブランド力と影響力の確立

①強力な物語性によるIP(知的財産)の確立

各アーティストには明確なバックストーリーがあり、それ自体がブランド価値となっています。BE:FIRSTなら「THE FIRSTで選ばれた7人の勝者たち」、MAZZELなら「BE:FIRSTに続く弟分グループ」、HANAなら「Noと言われたきた人全てを救う」といった具合に、明確なポジショニングが確立されています。

②クロスオーバー展開による相乗効果

「BMSG POSSE」のような所属アーティスト合同プロジェクトにより、各アーティストのファン層を相互に紹介。事務所全体のブランド力向上と、個々のアーティストの露出拡大を同時に実現しています。

③戦略的な外部提携

エイベックス、ユニバーサルミュージックとの合同レーベル設立により、大手の流通網・宣伝網を活用。独立性を保ちながら市場規模を一気に拡大する「ハイブリッド戦略」を成功させました。

3. マネタイズ:多角的収益化戦略

①音楽以外の収益源の多様化

グッズ販売: 「日本一グッズが売れる事務所」と呼ばれるほどの成功

  • デザイン性の高い商品展開
  • 普段使いできる実用的なアイテム
  • 限定品による希少価値の創出

ライブ・体験価値:

  • 高品質なパフォーマンスによる口コミ拡散
  • ファンクラブ限定イベントでのエンゲージメント強化
  • ライブ映像の二次活用(配信・パッケージ化)

②デジタル時代に適応した収益モデル

  • ストリーミング配信での露出最大化
  • SNS活用による無料宣伝効果
  • ファンクラブアプリによる安定した月額収益

一般企業が学べる5つのポイント

1. 顧客との関係性を「取引」から「共創」へ

BMSGがファンを「仲間」と呼ぶように、顧客を単なる「購入者」ではなく「パートナー」として捉える視点が重要です。

2. ストーリーテリングの重要性

商品やサービスに物語性を持たせることで、機能的価値を超えた感情的価値を創出できます。

3. 透明性と誠実さがブランド価値を高める

情報過多の時代だからこそ、隠し事をせず誠実に情報開示することが信頼につながります。

4. 一つの成功モデルを横展開する

BE:FIRSTで確立したモデルをMAZZELで再現したように、成功パターンの体系化と応用は効率的な成長戦略です。

5. 短期利益より長期価値を重視

「質より量ではなく、量より質」を掲げるBMSGのように、持続可能な価値提供が結果的に大きな成功をもたらします。

まとめ:なぜBMSGは成功したのか

BMSGの成功は、一言で表すなら「人を大切にするマーケティング」の勝利です。アーティスト、ファン、スタッフ、すべての関係者を「仲間」として尊重し、短期的な利益より長期的な価値創造を重視した結果、業界の常識を覆す成功を収めました。

成功のエッセンス:

  1. 深いコミュニケーション で信頼関係を構築
  2. 独自のブランド力 で市場での存在感を確立
  3. 多角的なマネタイズ で持続的な成長を実現

デジタル時代だからこそ、人と人とのつながりを大切にし、誠実で透明性の高い経営を行うことが、最も効果的なマーケティング戦略となる—BMSGの事例は、そんな示唆に富んだ学びを与えてくれます。

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